生体異物排除システムの機能を支援する機構


肝臓で行われる解毒代謝系

 私たちヒトを含めたセキツイ動物は、体内成分に由来するものか外来性のものかの種類を問わず、様々な化学物質が体内で過剰に蓄積することで引き起こされる障害を未然に防ぐ機構を備えている。肝臓で行われる解毒代謝はよく知られた例で、多種類の低分子有機化学物質の体外への排除に関わっており、非自己タンパク質などの高分子有機化合物を排除する免疫系とならんで生体の恒常性維持にとって欠かすことの出来ない機能である。したがって、肝臓のもつ生体異物排除システムの機能がどのようにして正常に保たれているのかを知ることは、恒常性を維持するために生命が備えている生存の根本に関わる仕組みの一つを知ることにもつながる。

 肝細胞は、異物排除システムを構成するタンパク質の機能が十分に発揮出来るように細胞内の環境を整える調節機構を備えている。例えば、体内や体外の環境の変化(化学物質の体内への侵入、ホルモン量のバランス、発達段階や加齢、など)を見極めて適切な時機に遺伝子の発現を制御したり、生合成したタンパク質を適切なオルガネラに配置するなどの様々な活動を行っている。

 肝臓の異物排除システムに関わるタンパク質のうち、小胞体膜の内腔側で抱合反応を触媒するUDP-グルクロン酸転移酵素と、細胞膜で異物排出ポンプとしてはたらくABCトランスポーターに焦点を当てて研究を進めている。下の図に個々の課題の関連を俯瞰してある通り、化学物質に応答して遺伝子の発現を誘導するしくみに始まり、小胞体膜への組み込みに続く局在化と細胞膜への極性局在化制御までを見据えて、これらのタンパク質の機能を支援する肝細胞のもつ仕組みを理解することを目標にして研究を行っている。

objective


生体異物排除システムを構成するタンパク質の局在化制御

UDP-グルクロン酸転移酵素

 UDP-グルクロン酸転移酵素 (UGT) は上記の三段階のうちの抱合に関わる酵素の総称で、UDP-グルクロン酸から水溶性原子団であるグルクロン酸を多種類の有機化合物に転移する反応を触媒している。UGTは二つのファミリーに分類されるが、我々はファミリー1 (UGT1) について遺伝子構造と発現調節機構を調べている。

ABCトランスポーター

 ABCトランスポーターは上記の三段階のうちの排出を行う輸送体タンパク質の総称で、ATPを加水分解すると放出されるエネルギーを駆動力として、第一相反応と第二相反応で多種類の有機化合物が代謝されて生じたグルクロン酸抱合体やグルタチオン抱合体などを細胞外に排出する。ヒトでは49種類が知られており、AからGまでの七つのファミリーに分類されている。

肝組織の構築

 肝臓の細胞膜は類洞と呼ばれる血液に面した側と、微小胆管と呼ばれる肝細胞の隙間に面した側で機能が二極化している。この性質を一般に極性といい、生体の恒常性(ホメオスタシス)の維持にとって肝細胞が極性を正常に維持することがきわめて重要な側面を持つ。

Copyright (C) Yoshikazu Emi. All Rights Reserved. design by pondt